RUIN FLOOR 1

無事に7Fに辿りついたあゆみは、疲れたので一度街に帰る事にした。

「クマくらい余裕だろ、頼んだぜ」
「はあー!?」

「じゃ、よろしくね」
「私にそれを持ち帰ってこいと!?」

「他言無用だぜ?」
「そんな所寄り道してる暇ないんだけど……」

次から次へと依頼がやってくる。
あゆみは、いつの間にか街でも一目置かれる存在になっていたのだ。

「悪い気はしないけど……なんだかなぁ」

樹海に行こうとしたものの、衛士に声を掛けられ、言われるがままに遺跡へとやってきたのであった。

ギンヌンガへいけるクエスト、存在忘れてたので今受けた。
スルーしても良かったんだけど、折角だし……人々に頼られていい気になってるってことで。

さすがにニチリンソウやらなんかロープやら、最初の雑魚は余裕だった。
オートバトルでいける。

「うわ、強そう……」
圧倒的な体格差の暴力。
しかし、あのキマイラさえ倒したんだから、と自らを奮い立たせて戦いを挑む。

毒1ターンでこれですよ。
念のため堅殻使ってみたけど、受けるダメージ14とかだったし、さすがに敵では無かったようだ。

余裕で獣を倒して先に進もうとしたものの、道が途切れてしまっていた。

「スイッチだ……」
一瞬押そうかどうか迷ったものの、そのスイッチ以外に仕掛けは見当たらなかった。

周囲をよく確認する。
「ワイヤーとか……ないよね……?うん、ない」
スイッチを押すと、どういう仕掛けか下の方から床が上昇してきた。
「ねえ、これも魔術なの?」
ブック・オブ・シャドウズは問いかけに反応せず、沈黙を守っていた。

鬼畜構成来た。
こいつは、Lv32もあるのにホーリーショックで60ものダメージを与えてくる。
後ろの稀少個体は眠っているうちに封じを与える事で何とかしたが、起きた後逃げられてしまって損してしまった。
しかも睡眠状態なので毒で上書きできないときたもんだ……。
幸い、毒ダメージが2倍なら撃破できるHPなので、ただでさえ少ない経験値を3倍にするのではなく、毒ダメージを2倍にして攻略すべきのようだ。

力を溜めてくるワーボアがひよことセットで出て来ると、地味に厄介だったりする。
真面目に戦っていると、TPがあっという間になくなるし。
抜け道開通目的なら、ESCAPEで戦闘回避しても良いと思う。

こいつは一発56程度のダメージを与えてくるが、料理で2倍にしなくても病毒で確1。

橋を上げたり降ろしたりしながらも先に進んでいくあゆみ。
しかし立ち回りに失敗して、大型の獣に囲まれてしまう。

「こ、これくらい何よ、毒ですぐ倒しちゃえばいいんだから」

1体は倒せたんだけど、2体目がダメだった。
1体目を相手しているときに、ライフトレードの威力が足りなくて取り巻きを一度にすぐに倒せなかったのが原因。
ライフトレードの威力が足りなかったのは、取り巻きの攻撃を1度避けたせい。
……攻撃を食らった方が生き残れるという面白い現象が起きている。

… … …

探索を続けていると、とある扉からあゆみでも分かるレベルの殺気を感じた。
「今更何が来ても、お、驚かないわ」
そう呟き、扉を開いた。

「うわ……ちょ、ちょっと待って、あ、」
魔物はその図体からは想像できないほど素早く動き、あゆみの逃げ道を塞ぎ迫ってきた。

さあわくわくバジリスクチャレンジだ!
どれくらい削れるんだろうか。

毒ダメージ自体は、普通に撃破を期待できるレベルで入る。
ただ、このあと蹂躙する剛爪で滅茶苦茶死んだ。
55程度のダメージが複数回とんでくるので、発動したら終わる。
堅殻を重ねがけしておくのと、爪技を封じておくのが勝敗を握るかと思う。

そもそもこれは毒で倒せと言わんばかりのステータスでしょう。 ライフトレード込みで毒ダメージが5ターン入れば倒せる。

問題はこいつ。なんと全ての状態異常が無効。
そしてライフトレードの威力は多く出ても100程度である。
つまり削りきる事は不可能。

とりあえず、パターンを考える。
最初はひたすら堅殻を積みながら回復。
堅殻を積んだら、回復後に攻撃を回避するのを待つ。その後、
1. 病毒の呪言(このターンの最後にバジリスクアイ出現)
2. フォースブースト+封の呪言:上肢
3. 黒霧の呪言
4. DEFENCE(本体は破滅の吐息、バジリスクアイは石化使用)
こんな感じか。
一度バジリスクアイが出たあとに蹂躙する剛爪が解禁されるようなので、腕封じは必須。
あとは石化の輝きをDEFENCEで確率で防げるなら防いでみる、と。

……というわけで、20回ほど試行してみたものの、石化の輝きをDEFENCEで防ぐ事はできなかった
もっと試したらできるかもしれないけど、現実的な確率ではないと判断した。

幾度目かのファクト・ループを経て、全身が石と化す感覚の中、あゆみは思った。
「霊具が他にもあればいいのに……」

何となく丹羽料理店を訪れたあゆみは、従業員に引き留められた。
話を聞くに、あゆみに会いたい人がいるとの事だった。
また何か依頼なのかと、思わず身構える。

そこに現れたのは意外な人物であった。
「あら、あゆみちゃん」
「え!?亜衣子さん!?」

樹海であゆみが多くの霊具を集めていると聞きつけ、ここにやってきたと話す亜衣子。
「情報屋としては、黙って見ているわけにはいかないわ。キフッ!」
その姿は、天神小での憔悴しきった亜衣子とはまた別の存在のように生き生きとしていた。
……虚ろな目をしているという一点を除いては。

「じゃあこれを……石化から防ぐような霊具と交換でいいですか?」
「あら、もうちょっと色つけられない?」
「え、えっと」

… … …

「じゃあね~、また来るから」
知り合い経由で手に入れたという珍しい霊具を、大量の霊具と引き替えに交換してもらえたのだった。
亜衣子と別れたあゆみは、新しい霊具を手に、バジリスクを撃破する決意を新たにした。

… … …

正直、予防の号令さえあれば楽勝なんですよバジリスクとか。 以下にバジリスク攻略パターンを示す。

堅殻を積んだら、回復後に攻撃を回避するのを待つ。その後、
1. 病毒の呪言(このターンの最後にバジリスクアイ出現)
2. フォースブースト+封の呪言:上肢
3. 黒霧の呪言
4. 予防の号令(本体は破滅の吐息……のはずが使わず、バジリスクアイは石化使用)
5. DEFENCE(本体を毒ダメージにより撃破)
以上!なんて弱いボスなんだ!

… … …

崩れゆくバジリスクを見ながらあゆみは呟く。
「そういえば、あの亜衣子さんってやっぱり……」

ブック・オブ・シャドウズの方をちらりと見る。
人命を弄ぶ暗黒の書は、嘲笑うように震えていた。

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