FLOOR 8

あゆみは8Fの探索を始める準備をしていた。
準備をしつつ、エクレアと名乗る少女と談笑する。
「篠崎あゆみさんって強いですよね!一人で世界樹様を登っているだなんて!」

その姿は、街の人間からしたら、若いながらも熟練冒険者の風格を見せていた。
実は400回以上息の根を止められている、などと思う者は誰一人として居ない。

新たなミッションの説明を受けている最中、ふと出身地の話になる。
「どちらからって、えーと、如月学園のある……」
知っているのであれば、もしかしたら帰る方法が分かるかもしれなかった。

「ふむ……如月学園……では、吉報を待つぞい」
どうにもこのご老体とは会話が通じない。

… … …

ミッションは特に面白い事もなく終了。
いや、強いて言うならひたすら炎でダメージを喰らいまくるあゆみちゃんが面白かった。
サラマンドラの部屋は敵が一切でないので回復の必要ないし、マップ描くだけなんだよなあ。

… … …

あゆみはミッションを終えて、8F東側の探索を始めた。
なんと、茨のようなものが一面に広がっていたのだ。
最初は戸惑ったものの、そこは黒魔術を使いこなしつつあるあゆみである。
「黒魔術は……いたっ…苦痛を負った分だけ…うぅ…強く…なるんだからっ……!」

そう言って茨を踏みつけながら進むあゆみを見ながら、ブック・オブ・シャドウズは満足そうに頷いていた。

「!?……やだ、敵が」
気付いた時にはもう遅い。
突如姿を現した巨体に一瞬で蹂躙されてしまった。

… … …

という事があるのでヨロイリュウはクソ。
こいつにスキルを使われると110近いダメージを喰らう。
2体現れたら、避けなければ終了である。

ライフトレードがLv1なので、HP1で撃っても300程度のダメージで、残念ながら削りきれない。
そもそも回復量も60くらいなので、通常攻撃でも死ぬ。
Lv20まで上げたらどれだけの威力が出るんだろうか?

この階はとにかくダメージ床が多いので、いちいち回復するのは現実的ではない。
そのため、常時HP1で戦闘に入る事を前提に攻略した。
実際、敵が複数出て来るならそれでほぼ問題ない。
HPが低い敵が沢山出て来るほど有利になれる。
画像に出ているモンスターはどちらもHP1ライフトレードで確1にもっていける。

この編成も、かみつく草のHPが281とぎりぎりではあるものの、HP1ライフトレードなら倒せる。
ゼラチンは非常においしいモンスターだが、ヨロイリュウと組んだ時は注意が必要。
死に際スキルで攻撃力をあげやがるので大変危険である。
確かスキルの一撃で140くらい喰らうようになった記憶が。

… … …

探索を進めていると、大量のイチゴを発見する。
周りに敵の気配はない……。

「ん、これはなかなか……」
イチゴは5人分はある。2人くらいは食べてしまおうかなと思った次の瞬間!
「えっ!?」
ブック・オブ・シャドウズから舌が伸び、あっという間にイチゴを平らげてしまった!

「ひどい!なんてことするの!」
悲壮感あふれる声が紅い森に響き渡った。

ここにきて新たな杖が売りに出された。
マイマイクラブ(HP+10、TEC+1)よりも優秀だと判断。
欲を言えばもっとHPが増える杖が欲しい……。

… … …

探索と戦闘を繰り返しているうちに、ブック・オブ・シャドウズが脈動し始めた。
それは新たな黒魔術が解禁された事を意味していた。

「生者を操る魔術……?」
それは、屍体を操るライズ・オブ・コープスどころの話ではない。
これは、とある黒魔術をこの地方でメジャーな技と同じ形に合わせた結果だ、とブック・オブ・シャドウズは饒舌に説明してみせる。
そんなものが一般化しているだなんて、つくづく恐ろしい地方に来てしまったものである。

「ま、敵もすごく強いわけだし、いっか」
あゆみの感覚はとっくに麻痺していた。

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