FLOOR 10

「ここが10F……かあ」
9Fの階段を上ってきたあゆみは、すぐにある違和感に気付いた。
「なんか、さっきの階よりも暖かい……気がする」

… … …

情報収集も兼ねて、一度街に戻る事にした。
しかし、話を聞いて回った限り――そもそも10Fに辿り着いた冒険者自体、極めて少ないらしい。
むしろあんたがその暖かい謎を解明してくれよ、期待しているぜ、などと言われる始末。
「……ただの女子高生なのに」

「そんな事より依頼が来てる、ほれ、これなんてどうだ?」
情報が得られず、酒場でうなだれていた所にマスターが声を掛ける。
風船のようなモンスターを討伐し、素材を手に入れるという依頼だった。

「……じゃあ気晴らしに、あ、そうだ!新しい黒魔術、結局試してないんだったわ」
早速、依頼を引き受ける事にした。

… … …

6F到達時点でも倒せるかなーと思って挑んだ風船FOE。
これが、Lvが上がった今挑んでみても強くて参った。
最初は素早さブースト★のグリモアを装備して挑み、毒を長引かせてからのライフトレード連打で倒せるかと思ったんだけどダメだった。
病毒でHPの大半を削る事はできるから、あと一押しなんだよなあ……。

結局、最初に病毒を使うのは同じだが、堅殻を維持して被ダメージを60程度に抑えつつ、メディカⅡも駆使してHPを回復できるようにしておき、ライフトレードでちまちまと削って撃破した。
堅殻はここにきても実に使えるスキルだ。
100程度のダメージが60程度になるので、なかなか悪くない軽減倍率なのではなかろうか。

… … …

「なんだぁ?集まったのは1個か、まあいいけどよ、ご苦労さん」
「無茶言うわよ、もう」
酒場で報告を済ませたあゆみは、早速10Fの探索を始める事にした。

10Fというわけで、新たな敵が出現するようになった。
右のグリュプスはともかく(それでも回避低下効果のある物理攻撃が厄介)、左のアクタイオンがブラストホーンという多段技を使用する。
少人数旅経験者は身に染みて知っているとは思うが、多段技は少人数旅における鬼門である。

画像はブラストホーン1発あたりのダメージ。
これが一度に2発飛んでくる。HPは200程度。
お分かり頂けただろうか。

対策は、病毒をまいて攻撃が外れるのを祈るか、ESCAPEすることだ。
HPが1なら、ライフトレードでグリュプスを一撃で倒せる為、勝利は上がる。

… … …

探索を進めていたあゆみは、恐ろしい気配を2つ感じた。
それは、散々苦しめられた風船型モンスターと、炎を吐くモンスター。
炎の方はともかく、風船型モンスターが通路を徘徊しており、避けては通れないようだ。

「私が見つかると炎を吐いてきてたけど、もしかして」
試しに、炎を吐くトカゲにわざと見つかり、すかさず横に避難してみた。
すると案の定、炎が風船型モンスターを焼き尽くす!
「……炎に弱いのかな、あれ」

炎によりあっさり蒸発して、跡形もなく消滅していく風船型モンスターを見ながらあゆみは思った。
「そういえば私、なんで今まであんな炎を受けても生きてたんだろう……」
ブック・オブ・シャドウズをちらりと見る。
そして、本が答える前に納得した。
「そっか、何もしなかったら貴方も焼けちゃうからか」

… … …

サウロポセイドンさんが満を持しての登場だ。
SQ2では疾風疾駆という高威力の全体攻撃で、一瞬にしてパーティを壊滅させるのが得意なモンスターだった。
だが今作ではハンマーヘッドという頭技で拡散攻撃をしてくる……という所まではストーリープレイ中に既に遭っていたので知っていた。
だが、それがどうしたというのかってくらい強いのがこいつだ。

画像の場面では、テラーが首尾良く決まったので自ら裁せよでハメてからのライフトレードで倒した。
それでも、一発でも当たったら最後、300オーバーのダメージを食らって死ぬ。
HPが満タンだろうと1だろうと、そして取り巻きがいようと安定して撃破する事は不可能である。

恐らく一番勝率が高いのはESCAPE。逃げるが勝ちって奴だ。

… … …

抜け道の開通を終えて、探索を続けようと扉の前にやってきたその時。
一人の男性が目の前に立ち塞がった。

「だ……誰?」
一番怖いのは幽霊でも獣でもない、人間である。
その事を身をもって知るあゆみは、見知らぬ男を前にして咄嗟に身構えた。

何の話を始めるかと思えば、樹海探索を諦めろと言い出す男。
もちろんあゆみは反論する。
「何よそれ!引退するのはそっちでしょ、おじいちゃん!」

その反論は、男の逆鱗に触れたらしい。
「烏合の衆って……」
あゆみは男とブック・オブ・シャドウズを交互に見る。

「我が名はライシュッツ!狙った標的は必ず撃ち抜くぞ!」
「言ったわね!私にはこれがあるんだから!弾なんて食べてやるもの!」
根拠もなく適当な事を言うあゆみ。
そんな一触即発な空気が漂うなか、どこかで聞いたような声が響く。

背後には少女が立っていた。
「あ!貴方は確か……えっと」
「前に樹海磁軸で会ったわね、私達はエスバット。聞いた事くらいあるでしょ」
そういえば、街でそんな名前を聞いたことがあるような、ないような。
思考を巡らせていると、やれやれといった表情で少女が口を開く。
「残念、あたしたちもまだまだこれからって事なのかしらね」

幸い、少女が来てからというもの、先程まで銃を構えていた男は銃を下ろして静かに目を閉じている。
軽く互いの自己紹介を済ませ、アーテリンデと名乗った少女の話を聞く事にした。
「10階の奥には強力な魔物が棲んでいるの。だから生半可な覚悟の冒険者を通すわけにはいかない」
要約するとこのような感じであった。
「話は分かった、けど、先に進むのなんて私の自由じゃない」

「どうして通せんぼするのよ!」
「どうしても通りたいのなら、大公宮の許可でも貰ってらっしゃいな」
この人達は公宮に仕える衛士か何かなのだろうか?
そう思ったあゆみは、渋々街に帰る事にした……。

「爺や、あの篠崎あゆみって娘……」
「……」
「……いや、まだアレを倒せるかどうか分からない、けど」

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風船型モンスターに蹂躙された篠崎あゆみ x5(累計:417)
篠崎あゆみ x5(累計:422)