FLOOR 16 [2]

1層より街に戻ったところ、酒場は例の盗賊の話でもちきりになっていた。
2度も騙された苦い思い出が鮮明に蘇る。
「本当!?今度こそ始末してやるんだから」
黒魔術の悪影響か、どこか血の気が多いあゆみであった。

早速、盗賊が向かったという1層に戻ると、妙に動きの良い衛士が姿を現した。
咄嗟に身構えるあゆみ。

「クケケケなんて言う人、初めて見た」
率直な感想を述べていたら、衛士の格好をした盗賊は、獣を呼び寄せるという笛を使いアリの獣を呼び出した!

このアリは弱い。
料理補正なしの病毒一撃で沈む。
問題はこの次なのだ。

そういえばこのイベント、抜け道使ってみても問題なく進むの知らなかった。
ストーリー組で遊んでた時は馬鹿正直に全てのアリを倒していったんだけど。

抜け道を通り、盗賊のいる場所まで辿り着いた。
「鬱陶しいガキだ……そんなに死にてえならぶっ殺してやるよ!」
盗賊が歪んだ旋律を奏でた、その直後。

巨大なサソリの獣が襲い掛かってきた。
「ひあっ!こ、これくらい平気よ!」

平気じゃなかったんだよなあ……。
脚封じされた後の極刑の針で一撃死してしまう。
HPもだいぶ高く、毒ダメージだけではそう簡単に死なない。
少なくとも、毒ダメージ2倍の料理は必須のようだ。

レッグガード+毒ダメージ2倍料理でなんとか勝利。
極刑の針は命中率は低いものの、脚封じ状態になっていなくても命中する可能性はあるらしい。
DEFENCEしても180喰らう恐ろしい技だった。

「こいつもゴミかよ……くそ、今に見てろ!今度こそもっと強い化け物を……」
「あ!待ちなさいっ!」
階段を上がっていく盗賊を追いかけようとしたその時、一際大きい盗賊の悲鳴と魔物の咆哮が響いてきた。
「え!?」

それから断続的に盗賊の悲鳴が聞こえてきたものの、それはどんどん小さくなっていった……。
「もしかして……自分で呼んだ魔物に襲われた?」

「ふふっ、物の力に頼ってるからそうなるのよ」
あゆみは鼻で笑い、ブック・オブ・シャドウズを手にしつつ街へと戻っていった……。

… … …

今度は、宿屋の娘においしい空気を吸わせるべく護衛を頼まれた。
普段は複数の衛士達に護衛されているのもあって、今回は一人しかいない事に不安を抱いたのか、宿屋の娘に問いかけられた。

「大丈夫、あの天神小から生きて帰ってきたんだから。負けるわけないじゃない」
「てんじん……って、な……」
「それじゃあ出発しましょっか」
「え、あ、うん……」

3層に入った瞬間、ブック・オブ・シャドウズの力を使って階段までひとっ飛び。
宿屋の娘を置いていくかと思いきや、そこは本が機転を利かせてくれたようである。
「いまの、って……」
「あ、えーと今のは」
あゆみが簡単に説明してみせると、宿屋の娘は目を輝かせる。

話は盛り上がり、あゆみの出身地についての話題になる。
「そうねー……強いて言えば、都会?かな」
「都会……かあ……」

「時計塔……そ、そうね、あったあった」
よもや屍体が吊された時計塔があったなどと言えるはずもない。
それからも他愛も無い話をしながら、あゆみは無事依頼を終えたのであった。

… … …

酒場の依頼が一段落し、ようやく4層の探索を始めた。
だがしかし、早速鳥の魔物が行く手を阻む。

「うわ……近付かない方がいいかな」
そそくさとその場を後にし、改めて探索を始める……。

こいつの破壊の顎は、素で喰らうと180ものダメージになる。
まあライフトレードがあるおかげで、一撃でやられなきゃ安いとも言える。
そう、こいつ単体でいるうちはまだ有情だったと、17階攻略中に思ったんだ。

畏れよ、我をはLv1でも決まりやすいので、アムリタの補給に関しては全く問題ない。
でも、蜂からもテントウからも100程度のダメージを受けてしまうので、3体目の敵が来たら最悪死ぬ。
敵編成は選ぶ必要がある。

… … …

道の突きあたりにて、木の上に何かが引っかかっているのを発見した。
少し前に酒場で聞いたとおり、樹海での拾得物は拾った冒険者の物となっている国である。

「ちょっと揺らしたら落ちてくるかな……えいっ」

「ひいっっ!?」
あゆみは情けない悲鳴を上げ、首筋に落ちた何かを振り払おうとするが……
左手には、ぐちゃ、という嫌な感触が残った。

「いやああああああっ!!」
泣きながらブック・オブ・シャドウズの適当なページを破り、首筋に落ちた何か――毛虫を掴んで振り払った。
ブック・オブ・シャドウズは「そんな事に使うのかよ」という表情であゆみを観ていた。

この階の中では厄介な部類に入る編成がこれ。
HPはここまで削らなくても、半分くらいまで削れていればライフトレードで一掃できる。
が、テントウがこちらを攻撃をしてこない事もあるし、素早さブーストの効果で中途半端に回避する事もしばしばある。
というわけで、HP調整には注意する必要がある。
17階をやると分かるが、この編成はまだマシな方である……。

… … …

毛虫の件以後は慎重に立ち回ってどうにか階段まで辿り着き、改めて地図を広げてみた。
「この真ん中って……何があるんだろう」
空飛ぶ城はまだ、見つかりそうにない。

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