FLOOR 17

そういえば桜の階層に突入した時に翼人と出会った事を思い出したあゆみは、何となく公宮へと報告に行った。
「なんと、すぐ姫様をお呼びするぞい」
「え?あ、あの」

思ったより大事になっていた。

「え?盟約の……えっ?」
話によると、どうやら樹海の先に進む為に必要な言葉らしい。
覚えきれないのでメモをとろうと思ったものの、手元に手頃な紙がなかったのでとりあえずブック・オブ・シャドウズに書く事にした。

「ところでそのメモ帳、随分と禍々しいですね」
「あはは」

この階にはビッグモスという恐ろしい敵が出て来る。
混乱付与技である困惑のリンプンはアクセサリで回避できるんだけど、アクセサリ枠を潰す代償として蜂の毒を受ける可能性が出てくる。

また、混乱してなくても多段技の切り刻みは低確率で命中するうえ、HP全快から2hitしたらそこで死亡。
全力でESCAPEしたいところなんだけど、困った事に依頼でこいつの素材を要求されるので、そうそう逃げるわけにもいかず……。
困ったものである。

… … …

「これは……キノコ?」
見るからに怪しい見た目をした桜色のキノコを見て、あゆみは警戒心を強める。
しかし、ブック・オブ・シャドウズが「そのキノコからは魔力を感じる」と、食べる事を勧めてくる。

今まで散々無茶をしてきたのである。
今更キノコを食べたところでなんともないのではないか。
これで、より強くなれるなら……
あゆみは、そのキノコを口にした。

「ふふ……ふふふふ」

「アッハァ!イィイイイィィ!」
30秒後、そこには、霊界ラジオ状態のあゆみがいた。
幸い周囲には他の冒険者の姿は無く、モンスターですら恐れをなしてあゆみを避けているようだった。

……。
「……んぅ……う……あ」
気が付いたら地面にうずくまっていたあゆみは、しばらく起き上がる事ができなかった。
朦朧とした意識の中で、最近すっかりお馴染みになった声を聴いたような気がした。
「どうやらただの毒キノコだったようだ」

ところで、ここにいるサイ。
南西にある宝箱を取りに行くと、こいつのせいで戻る事ができなくなってしまう。
ストーリーやってた時は全然気付かなかったけど、あらかじめ落としてから取りにいけばいい事に気付いた。
以上どうでもいい事でした。

あゆみは巨大なサイを誘導し、穴に落とすことに成功した。
「……天神小の幽霊の方がよっぽど頭がいいわ」
サイは下の階に落ちていったのだろうか。
敢えて考えないことにした。

… … …

17Fでトップクラスに困ったのがこの編成。
こいつらが攻撃してくると、DEFENCEしていても全快から死んだりする。
実際何度も死んだ。
今後もそういう編成は増えていくんだろう、尚更敵を選ばなくては。

とは言っても、ビッグモスと同じくアイアンタートルも素材を集めなければいけないので、本当にたちが悪い……。

… … …

探索を続けていたあゆみは、目の前に蹴りやすそうな小石を発見した。
あまりにも蹴りやすそうなので、特に何の気も無しにその石を蹴飛ばしてみた。

「いった!?」
その石は樹にぶつかって跳ね返り、見事あゆみに命中。
自業自得としか言いようがない。

「……」
釈然としない表情で石を見つめる。
ファクト・ループによって死の瞬間を繰り返してきたあゆみには、この石を蹴るとどのような動きで飛んでいくかが自然と浮かんできた。
「繰り返すのは得意なんだから!」
そして先程と同様に石を蹴飛ばし……

見事回避に成功した。
あゆみは己の限界を超えたのだ。
「やったぁ!」
遠くまで弾け飛んでいった石を眺めながら、喜びを抑えられず小躍りする。

「あゆみちゃんは何がしたかったの?」

「え?」
すぐに振り返ってみたものの、そこには誰も居なかった。
首を傾げつつも探索に戻る……。

… … …

サイを落下させまくり、無事に階段へと到着。
この辺のサイは本当に頭が悪いな!

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