天空の城の2階に到着したあゆみの耳に、オーバーロードの声が響く。

「自然の……摂理？」
「自然の摂理、それは死だ。生きる者みないずれ死す、それがこの世の抗えぬ事実だ」
「……」
天神小で散っていった友達に突きつけられる残酷な事実。

そして、そんな現実を覆す誘い。
「諸王の……聖杯！」
「ほう、その名を知るか……諸王の聖杯こそ、まさしく我が研究を続けてきた、死から逃れる手段」
「やっぱりあったんだ……」
「汝もまた、我の研究に役立ってもらうとしよう。生命力あふれる者ほど相応しき贄となる……」

そう言って声は聞こえなくなった。
「……話聞いてよ」
諸王の聖杯について聞く為には、先に進むしかなさそうである。

「う……動かない？」
こんなの天神小にもいたなぁと思いながら、恐る恐る近くを進んでいった。

少し進んだところで、甲冑の隣で奇妙な物体が浮遊しているのを発見した。
あゆみが近付こうとした、その瞬間！

「きゃああっ！？」
その奇妙な物体は目の前で大爆発を起こす。
その爆発力は大したもので、爆発に巻き込まれた甲冑は粉々になり床に散らばった。
不安に思うあゆみだったが、安心しろとばかりにブック・オブ・シャドウズが話しかけてくる。
「あれで死ぬ事はない、むしろ苦痛を魔力に変えるのだ」
あゆみは覚悟を決めた。

「え、こんな所にリス？」
これまでも樹海の中では何度か見かけ、そのたびにアリアドネの糸を奪っていったリス。
そんなリスが今、力無く横たわり、無防備な姿をさらしていた。
「具合でも悪いのかな……」
流石に心配になったあゆみが近寄ると……

「ちょ、ちょっと待って！」
一瞬の隙をついてリスはあゆみの肩を駆け上がり、バックパックから何かを持ち去っていった。
もはや調べるまでもない、持っていったのはアリアドネの糸だ。
「何なのよもー！オーバーロードの仕業なの！？」
城内にあゆみの声が虚しく響き渡った。