RUIN FLOOR 3-4

結果から言うと、あゆみは形態を変化させたオーバーロードに、為す術も無く叩き潰された。 「勝てない……」

気が付いたら宿屋にいるという感覚。
もう500回以上繰り返しているものの、そのたびに人間の世界から離れていっている気がしてならないのだ。
だがそんな事を気にしてはいられない。
何としてもオーバーロードを下し、諸王の聖杯を手にしなければならないのだから。
「情報を、集めないと」

丹羽料理店に顔を出すと、相変わらず亜衣子が虚ろな顔をしていた……ように見えたが、どういうわけか前よりも生気が感じられる。
亜衣子が変わったのか、それとも……。

「あら、あゆみちゃん。どうしたの、深刻な顔をして」
「それが……」
あゆみが強敵が倒せない事を話すと、亜衣子はモンスター図鑑を開き始めた。
「ここからここ、まだ埋まってないわね」
「あ……」
「まだ倒していない魔物を倒してみれば、強くなれるんじゃないかしら」
言われてみれば、大公宮より遺跡の魔物討伐依頼が出ていたはずである。
「試してみます、ありがとうございます!」
「もし良い霊具が出たらよろしくね、キフッ!」

… … …

指定の場所に向かうと、青い光を放つ装置を発見した。
どうしたものかと思ったあゆみは、何となく手を光にかざしてみた……次の瞬間。
「え、きゃあっ!」
突然、エレベーターで急上昇するかのような感覚に襲われた。

……気が付くと先程とは別の場所に移動していた。
「ここ……どこ?」
あゆみの呟きに反応したのか、何処からか不思議な声が聞こえてくる。
「人の子よ。印を持たぬ者よ。汝は我が待ち続けし者ではない」
あゆみには何を言っているのかさっぱり理解できない。
「だが、汝がここに来たのも何かの縁。汝の持つ力を我に見せてもらおう」
「どういうこと!?勝手に決めないで!」
まるで聞く耳をもたない様子の謎の声は続ける。
「この地は修行のための試練の地。故に結界が張り巡らされている。汝の力を以てしても、試練の地を超えるまで外には出れぬと思え」
そう言い残して声は聞こえなくなる。

あゆみは慌ててアリアドネの糸を取り出すも、それは既に効力を失っていた。
「ひどい!これじゃ多重閉鎖空間と同じじゃない!」
だが、文句を言っても何も始まらない。
出口を求め、探索を始める事にした……。

… … …

見事に即死した。
お前身構えたらなんでもやっていいって思ってるだろ!

ギンヌンガ3階はこいつの他にも混乱をばらまく南瓜が雑魚で出て来るし、結構危険である。
ただ、カマキリの即死技は1ターン猶予があるので、ESCAPEする余裕はある。
耐性をつけるとしたら混乱耐性の方が良い。

今の時期になってようやくここに行こうと思ったのは、FOEのドロップから得られる盾が欲しかったためだったりする。
流石に70引退70なら余裕だった。

TPさえ残っていれば、2体だって相手できる。
そう、70引退70ならね。

「壁が動いたと思ったら気持ち悪いモンスターだし……もう脚疲れたし……」
壁のモンスターを薙ぎ倒しながら進み、遂に樹海磁軸へと辿り着いた。

「あれ、意外とあっさり?」
もう一悶着あると思っていたので、拍子抜けであった。
閉鎖空間からこれだけスムーズに脱出できるなんて。

迷わず磁軸を使用して帰ろうとするあゆみの耳に、またしても不思議な声からの言葉が届いた。
「汝がこの地の謎を知りたいと望むのであれば……遺跡の奥、境の扉の先に進むがいい」

「来ちゃったんだけど……」
入った瞬間から、空気が今までと全く異なるという事に気付く。
そして、再び不思議な声が聞こえてくる。

「名も知らぬ冒険者よ。汝が謎を追い、この地の真実を求めるなら更なる試練に立ち向かうのだ」
大袈裟なことを言われ、慌てて首を振るあゆみ。
「い、いや全然、ただ新しい素材とか手には入ったらなぁって……」
「この地に眠る幻の力……それに直面したければ、4つの封印を解いてみよ」
不思議な声の主は、話を聞いているのか、いないのか。
だが、新たな力を得られる可能性が少しでもあるのなら、あゆみにとっては挑んでみる価値のあるものだった。

… … …

「これで4つめ……っと」
特に苦戦する事もなく、4つの封印を解く事に成功した。 「なんか拍子抜け」
……どう考えても、強くなりすぎただけである。

「よく来た、冒険者よ」
封印を解いたあゆみを不思議な声が迎える。
「今からここに現れるは幻の力。かつてこの地にいた人を超えし力……」
「……」
「いでよ、ファフニールの化身よ!」

何処からともなく鎧を纏った化け物が現れた!
「今更こんなので負けないんだから!」

実際負けなかった。ほんとに。
こいつはただでさえ弱いのに、更に十分強くなった状態での戦闘だから尚更弱く感じた。

このHPで放ったライフトレードでお供を一撃で倒せるんだから、楽勝でしかない。
パターンも組む事なく終わった。

エフェクトかっこいいのに10ダメージx2だからね。
お供が2体いても100ダメージx2なので余裕で耐える。

突如現れたファフニールの化身とやらをあっさり撃破してみせたあゆみ。
「これが幻の力なの?」
「見事だ。人の子よ……」
声の主は驚いたような口調で話す。
続けてこの遺跡には更なる圧倒的な力が眠っていると語ったが、それについてあゆみが訊くと「天空の支配者を凌駕してから」と言うだけで、何の情報も権利も得られなかった。

「その日を待っているぞ」と妙に期待を込めた感じの声は、その一言を最後に聞こえなくなる。

「結局、手に入ったのはこれだけかぁ」
唯一手に入れた、珍しそうな素材から作られた炎のフランベルジュは、特にあゆみの役には立たなかったという……。

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