18階に辿り着いて早々、耳障りな音が聞こえてきた。
その音は森の至る所から発せられており、実に騒がしい。
「これくらい、うん……じゃなくてソフトクリームみたいな所で流れてた音楽よりはマシよ」

体育館での出来事を思い出しつつ、18Fの探索を始めた。

しばらく探索していると、大部屋に辿り着いた。
耳障りな音が一際うるさくなったと思ったら、巨大な蛙と目が合った。
「うええっ！？」

慌てて逃げるあゆみ。
それを追いかける蛙だったが、勢い余って穴に落下していった……。
「……あれ？いない？」

それからも何度か蛙には会ったものの、すぐにいなくなっているので、あまり印象には残らなかった……。

「蝶……かな」
蜘蛛の巣に絡めとられ、観念したかのように静止している蝶を発見する。
慎重にその蝶を眺めつつも考える。
「これはきっと何が意味があるはず……蝶は冒険者で……蜘蛛の巣は樹海の罠とかそういうものの暗示で、少しの油断で簡単に絡めとられてしまう、的な」
咄嗟に辺りを見回すが、特に危険なものはない。

「やめとこ」
色々深読みしてみたものの、根拠はないが多分危険だと思い、蝶を無視して先に進むことにした。

階段を上ろうとした所で、あゆみの頭上より声が響いてきた。
「だっ、誰！？」
その問いかけに応じるでもなく、あゆみの行く手を阻むように降り立った。
「ちょっと、何のつも…り……？」
なるべく強気に振る舞おうとするものの、周囲から無数の視線を感じ身が竦む。

何を言っているのかさっぱり理解できない。
しかし、ある言葉を聴いた瞬間、思わず反応する。

「諸王の聖杯！？」
あゆみは目を輝かせ問いかけるも、翼人は特に意に介さない様子で続ける。
「時満ちるまで立ち去れ、土の民！」
どうしたものかと思ったが、ふと思いつきで手元のブック・オブ・シャドウズのページをめくる。

「えーと……これこれ」

「古き盟約の言葉を持つ者は現れた！天より土に帰りし者が、今また天へと戻るのか？」
驚きの表情のまま翼人は飛び立っていく。
何処に隠れていたのか、その他大勢の翼人も散り散りに飛び立っていく。

「それより諸王の聖杯！」
桜ノ立橋に、あゆみの声が虚しく響いた。