そらのうきぶくろ

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バルダーズ・ゲート3をクリアした話

Baldur’s Gate 3

RPGというものがコンピュータで遊べるようになる前に作られた、世界で初めてのRPG・ダンジョンズ&ドラゴンズの世界観を受け継いでいる超大作RPGのバルダーズゲート3。フォロワーがやっている話を聞いているうちに自分でもやってみたくなり、他にやるつもりだったゲームをガン無視して今年に入ってからすぐに始めた。

だが、とにかくボリュームがすごかったのと、まとまったプレイ時間を取るタイミングとの兼ね合いにより、クリアまで半年ほど掛かった。個人的にとんでもなく面白いゲームだったと思っており、せっかくなので久々にゲーム感想記事でも書いてみることにした。
ゲームの面白さを著しく損なうようなネタバレは書かないつもりだが、自分のゲーム体験に基づく様々な事は書いていくつもりなので、この先を読むかどうかは自身で判断してほしい。

これってどんな話?

自分が操作することになるキュラクターのメイクを終えると、まるで映画でも見ているかのような美しいグラフィックによってさっき作ったばかりのキャラクターの目に虫が入り込むシーンを見せられ、ゲームの世界に放り出されることになる。
この虫は何なのか、フォロワーが言っていた表現が非常に的確なのでそれを借りて言うなら「きたねえこえちか(FF14)」。この虫が頭に入っている者同士で手っ取り早く意志疎通ができるようになったり、人間離れした特殊能力が手に入ったりなど様々な特典がある代わりに、そのうち虫に乗っ取られて人としては死ぬというリスクがある。死なないようにこの虫を何とかしようね、というのが最序盤にゲーム側から与えられる大きな目的になる。
虫を頭に入れられたのは主人公以外にも大勢おり、ゲーム中で仲間になるキャラクター達はみんな同じ虫を入れられた者同士ということになっているんだからなかなかぶっ飛んだ設定だ。
ちなみに世界の治安は全体的に最悪の部類に入る。死体がその辺に放置されている程度には最悪だ。治安の悪いファンタジーが好きな人にはたまらないだろう。

途方も無い自由度の高さ

海外のゲームを遊んだ経験は全然ない。どうもあちらでは自由度は高ければ高いほど良いとされている……というイメージがなんとな~くあるのだが(偏見だと思って読み流して欲しい)、バルダーズゲート3の自由度は尋常じゃないほど高い。ゲームシステム自体が自由度の高いD&D(=TRPG)をベースにコンピューターゲーム化しているのもあって、かなり幅広い行動が行える。その辺のものを拾う、投げる、殴る、あたりは序の口。弓矢や魔法で攻撃、 ジャンプや飛行での移動、 魔法で敵を操る、ガス状になって細い管を通り抜ける、犬猫などの動物や死体と会話して情報を得る……などなど挙げればきりがない。
それに、自由度の高さは単に出来る行動の多さだけに留まらない。オブジェクトを調べたり、人と会話する時なんかに発生するカットシーンでいくつか選択肢が出てくる事があるが、多様な選択肢が用意されている上にそれぞれの選択に対して相応の結果がきちんと用意されているのだ。プレイヤーの選択によってゲームマスターがあらゆる展開を臨機応変に用意する、というのはTRPGの醍醐味であるが、このゲームは膨大な分岐とそれに対する結果を用意しておくことでTRPGと同じような体験をコンピュータゲーム上で提供してくるんだから恐ろしい。おかげでゲーム中のイベントについてこのゲームを遊んだプレイヤーに聞いても、ひとつとして同じ話が返ってこないという、並のRPGでは考えられないような事態が発生している。それぞれの冒険というやつだ。

ゲームを進めているとクエストが発生することがあるが、クエストの結末も一本道ではない。ものによるだろうが解法は一つではないし、結末も「依頼人が死んだから終わり」とか「救う対象が死んだから終わり」とか、起こった事を考えれば確かにそうなるが……みたいな分岐が当たり前のように用意されている徹底っぷり。クエストの関係者だからといってシステムに守られている、みたいな事は基本的に無く、「この世界で起こり得ること」のすべてが起こり得る。必然的に、遊んでいて世界への没入感はとてつもなく高くなる。こうしてプレイヤーの睡眠時間はどんどん削られていくのだ。

歯ごたえのある難易度

このゲームは始める時に難易度をいくつかの選択肢から選べるようになっている。一番簡単な難易度「探検家」を選んだのだが、D&D自体のルールについては全く知らない状態で、特に攻略サイトを見ながらでもなく手探りで徐々にシステムについて理解していく……。というプレイスタイルでやるのであれば、間違いなく「探検家」で遊ぶのがおすすめだろうな、というのを改めて振り返ってみて思った。一番簡単にしたうえで戦闘の難易度は十分にあると思ったし(実際、エンディングに辿り着くまで5回程度はパーティ全滅に追いやられたことがある)、その場にある地形やオブジェクト、残りの手札(手持ちアイテム、呪文スロットなどなど)について考えながら知恵を絞って状況を切り抜けた時の爽快感といったら、それはもう何物にも代え難い。一番難しい難易度にしない限りはセーブ&ロードによる試行が制限されるということもないので、じっくり腰を据えて遊ぶことができるようになっている。
ただし「探検家」は簡単なだけではなくマルチクラスという要素が利用できないという制限もあるらしく、軽く調べたところマルチクラスがあれば戦闘の動きの幅が更に広がるらしい。今後もしこのゲームの2周目を遊ぶことがあれば、「探検家」のひとつ上の難易度、「冒険家」を選んで遊んでみたいところだ。D&Dのシステムも遊んでいるうちにだいぶ理解が深まったことだし。

判定を行うという楽しさ

このゲームには何かをアクションを起こす時にしばしば「判定」を求められる。20面ダイスを振り、結果が指定された値(=難易度)以上だったら成功、というやつだ。敵に見つからないよう隠れる時、鍵のかかった宝箱や扉を解錠する時、誰かと会話している最中に選択肢で説得したり脅したりする時、何かを見たり聞いたりしたときにその内容について歴史的な知識を持っているかどうかを決定する時……など、本当に様々な場面で求められる。ものによっては画面の中央に難易度とダイスが表示され、ダイスが転がるアニメーションの後に結果が出てその判定に成功したかどうかが分かる、というような演出がされる。コンピュータゲームなので、内部的には「1から20の乱数を発生させる」という処理が発生しているに過ぎないはずなのだが、どういうわけか画面にダイスが表示されることでその結果に説得力が生まれる気がするのが何とも不思議で面白いところだ。状況次第では仲間の一人が肝心なところで判定に失敗して一気にパーティがピンチに陥る、みたいな事も発生するため、本当にお前はしょうがないやつだな!みたいな感情が生まれたりして、そんな思い出のひとつひとつが積み重なって自分だけのゲーム体験になっていく。それってとても素晴らしいことじゃないだろうか?
ちなみにすべての判定のたびに画面にダイスが出てきて振る必要がある……というわけではもちろんない。例えば「地面に何かが埋まっている事に気付くかどうか」といった判定は、問題の地面の近くに移動するだけで自動で行われるようになっている(チャリチャリと音がして判定に成功したかどうかが吹き出しのような形で表示される)し、それこそ戦闘中なんか無数の判定が発生するがシステム側で勝手にダイスを振って進行していくので、きちんとゲームのテンポを阻害しないように作られている。気になったら戦闘ログを確認すれば、この時にこんな出目だったのか!といった事に気付けたりするので、TRPGをコンピュータゲームとして遊ぶ上でのいいとこ取り(なんといっても人よりコンピュータの方が処理が早い)がされていると言えるだろう。

魅力的な仲間達と彼らのストーリー

前の項目で主人公と同じように頭に虫を入れられた仲間がいるという事を書いたが、様々な理由で彼らは主人公のパーティに加わり、行動を共にするようになる。彼ら一人一人にパーソナルクエストが用意されており、それを進めていくと「この世界で生きる彼らのストーリー」が展開される。それは大きな目的(メインクエスト)と密接に関わっていることもあれば、そうではなく所謂「寄り道」的なポジションの話だったりすることもある。だが、たとえ寄り道だったとしても彼らにとっては間違いなく人生の一部になる大きな出来事であり、クエストの結果次第ではその後の振る舞いが大きく変わることすらある。それどころか話の流れ次第では道半ばで死亡し、パーティから永久離脱することさえゲーム側で想定されているんだからその作り込みに感服するほかない。せっかくなので致命的なネタバレにならない程度に彼らのについての所感を書いておこう。

シャドウハート:最序盤からの付き合いでだいぶ愛着がある。ただでさえ虫が頭に入っているというのに更に襲い掛かる過酷な運命、その結末には大変引き込まれるものがあった。
ゲイル:こちらもかなり序盤から妙な登場をした人。恋愛に対して古くさい考えを持っているタイプで、最終的に主人公のパートナーにした。この人はなんていうか、最後に馬鹿でかいことをしていったな……と。
ウィル:全身が正義の男。正義のために得た悪魔(デヴィル)の力で戦う孤高のヒーローといった趣のキャラクターであり、幾度となく訪れる苦難に立ち向かっていく彼の生き様は必見。
レイゼル:とにかく態度が悪いが、話を進めていくと……。彼女のストーリーはおそらくシャドウハートとの対比を意識して作られていると思った。こちらもまた過酷な運命が待ち受けており、主人公が協力していなかったら人生が大きく変わっていた事が想像できる。
カーラック:でかめの炎の女。言動は仲間にできるキャラクターの中で一番幼いというか、かわいげがある。プレイ中はでかめのファちゃん(FE封印の剣)と呼んでいた。
アスタリオン:奔放な吸血鬼といった第一印象の男だが、とあるイベントをこなすことで受ける印象がどんどん変わっていく。サブクラスをアサシンにしてせこい戦いを繰り返していたら、いつの間にかとんでもない火力を叩き出すようになっていたのが印象深い。

超大作であるが故の問題点

いいところばかり挙げてきたが、もちろん問題がないわけではない。基本的に大満足しながら遊んでいるので、たまーに悪いところが出てくると気になってしまうのは人の性。エンディングまで遊んでみて、個人的に気になった部分を挙げてみる。
進行不能になる不具合がある:アンダーダークを彷徨っている最中に特定のモンスターをターゲットしただけで強制終了する、という事象があり困ったことがある。偶然ではなく再現性があった。他にも、カットシーンがいくら待っても進まなくなったり、誰かに話しかけた状態になったままフィールド画面に戻ってきて移動以外の何もできなくなるとか、イベント戦闘中に何の行動もできなくなったとか。これらはセーブして再起動&ロードすれば先に進めることはできたが。
仲間が危険物を避けてくれない:戦闘が終わるとパーティメンバーが主人公の近くに寄ってくるが、その時に地面に火があったり設置系の呪文(例えば「短剣の群れ」とか)の効果が残っている時に、突っ込むとダメージが発生するのに容赦なく突っ込んでいく。HPは有限のリソースなので無駄に削られるのは困る。これに関しては一応プレイヤー側で対策が可能で、戦闘が始まったらパーティのグループ化(PC版かつデフォルトのキーバインドならGキー)コマンドを使ってグループ化を解除した状態にしておけば、戦闘が終わっても勝手に主人公を追従してくる事はない。
ロードが長く、ロード完了を待たずにカットシーンの再生が始まる:ロードが長い事そのものについては、SSDではなくハードディスクにインストールしてしまったせいと考えれば我慢できる。が、まだ画面がロード中だったり、何も表示されていない状態で誰かが喋っている声が聞こえてくる(もちろん英語なので、リスニングに長けた日本人じゃない限り何を話したのかが分からない)ということがたびたび起きた。さすがにロードの完了は待って欲しかったな……。
「手先の早業」の重要性が他の技能よりも遥かに高すぎる:先に挙げたものは不便だったり不具合といったものだったが、これは毛色が異なり、ゲームバランスについての話になる。手先の早業は主に宝箱や扉の解錠や罠解除で要求される技能なのだが、それを使う頻度がとにかく高いのだ。宝箱はともかく、罠解除はたまに狭い空間に別々の罠がびっしり仕掛けられている事があり、1つでも解除に失敗すると手痛い目に遭うので、他の技能と比べて重要度が全然違う。はっきり言って「手先の早業」に習熟しているかどうかでゲームをテンポよく遊べるかどうかが全く変わってくると思う。これからバルダーズゲート3を遊ぶ人がいたら「手先の早業」に習熟しておくことを是非お勧めしておく。

と、つらつらと書いてしまったものの、超広大な世界を創意工夫しながら冒険する楽しさに比べたら些細な事に過ぎない。上の画像でゲイルも言っているように、傷付いた心はいずれ癒える。大冒険の末に、ベリーレアやレジェンダリーなアイテムなんかを入手したとなれば尚更だ。何の変哲もない地下への道の先には薄汚くて広大な未知の冒険が広がっていたりする。

結論:何よりまず、バルダーズ・ゲートに行こう

とはいえ、じっくり遊んだ結果総プレイ時間は230時間。気さくに人に勧められるものではない。調べられるものは無数にあるし、拾えるものも無数にあるし、そのすべてを見ようとすれば気長にやるか睡眠時間を犠牲にするしかない。すべての分岐を見ようとするなら社会生活を棒に振る覚悟すら必要かもしれない。だからこそ、このバルダーズゲート3というゲームを進んで人に勧めるつもりはまったくない。シンプルに危険物だからだ。勧めた責任だって取りたくないしね。
ただ、エンディングを見た者としては「あの光景」を見た人が一人でも増えてくれたら。その上で自分だけの冒険を共有していけたら。それはとても嬉しい事だと思っている。
最後に、こういう人には向いているんじゃないかな?という要素を挙げておこう。
・汚いファンタジーが好き
・自分だけのゲーム体験というものが好き
・露骨なエログロや、洋ゲーのグラフィックに対して抵抗がない
・勧めないって書かれているのを見てやりたくなった天邪鬼の人

以上、最後まで読んでくれた人はありがとう。読めなかった人はまた明日頑張ろう。

ゲームたのしいよ | 君はコメントしてもいいししなくても良い

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