FLOOR 20+etc

20階に足を踏み入れると、そこには樹海の中とは思えないような青空が広がっていた。
「もしかしてここって……世界樹の頂上?」
今までの法則からして、21階が次の階層になっているはずである。
だが、次の階層への階段なんてものは、そもそも存在するのだろうか?

とにかく、20階を探索すべく歩き出したその時。

「あの時の……翼人?あ、でもちょっと偉そう」
よく見ると、18階で会った人とは違った装飾を身に着けていた。

翼人は、あゆみのやや失礼な言動など意に介さない様子で話を続ける。
「ここから先、天へと繋がる森を進みたければ……」
「天へと繋が……って、本当なの!?」
「進みたければ、いにしえの飾りを持ってこい。それなくしては、古き盟約の者とは認めることができない!」

翼人はそう伝えた後、あゆみの行く手を阻む。
「うぅ……」
以前と同様、周囲からは無数の翼人の気配がするのが分かった。
「困った時はあそこよね」
あゆみは、渋々その場を後にしてラガード公宮へと向かった。

「おじいちゃん!」
あゆみは20階での出来事を高速で捲し立てた。
「そういうことなら、姫様を呼んでくるぞい」
大臣のゆっくりとした動きに、あゆみは苛立ちを隠せずにいた。

「本当!?」
「はい、ですがこれを渡すという事は、天空の城への道を探し求めること……危険を無理強いはできません」
「私なら平気です!ミッションでもなんでも受けます!」
「……では、この公国の為に、是非とも見つけ出してください……天空の城、そして諸王の聖杯を」
こうしてあゆみは、いにしえの飾りを手に入れた。

樹海入り口。
「こんなに頼みこまれているんだもの、手に入れたら少しくらい私の為に使ったって大丈夫」
もちろん根拠なんてない。いざとなったら、盗み出してしまえば――
「待ってて、如月学園のみんな!諸王の聖杯、絶対に見つけ出してやるんだから!」

意気込んでいると、樹海から見覚えのある老人が姿を現した。
「い、今の聞こえてないよね……?」
以前ライシュッツと名乗った男は、あゆみに声を掛けてきた。
「久しいな、天神小サバイバーの者……。折り入って頼みがある。酒場で改めて話したい」

鋼の棘魚亭。
「……ちょっと、急いでるんだけど私」
急いでいるのも間違いはないが、何しろ3層での出来事があったのだ。
正直、気まずい。

「1つ、ヌシらでなければ成し得ぬ頼みが出来た」

話を聞けば、樹海3階の南西で姿を消したお嬢様――アーテリンデを連れ戻して欲しいとの事である。
「自分で行けばいいじゃない、何か気まずい事でもあるの?」
「しかし、何と言えばお嬢様が戻ってくれるか分からず、困り果てているのだ」
「はあ……」

彼らのかつての仲間を倒した事で、あゆみも引け目を感じないわけではない。
1層なら敵も弱いし別にいいかと思い、依頼を受ける事にした。

3階に辿り着いたあゆみは改めて地図を確認し、軽率に依頼を受けた事を後悔した。
「ここって前にも行った、強い敵が出て来る場所じゃない……」

3Fの下り階段までは以前行った事があるので、2Fから。
ここはあまりにも極悪な敵が出て来る。
このラクライウサギは、天雷(ランダム多段3~5回雷攻撃)を使って来る。
DEFENCEしない場合、一発あたり80程度のダメージ。
それが3~5回飛んでくるという事は……勝てるか、こんなもん!

蛙にも囲まれるし、ろくな事がない。
ラプターロード+αの敵編成も基本的にESCAPE必至だし、ESCAPE成功率は高いとはいえ心臓に悪い。
ラプターロード+ラクライウサギx2の編成なんて、DEFENCEしても攻撃を耐えきれない。

そんな状況で地図を埋める気なんてさらさらなく、一刻も早く階段を見つける事に躍起になった。
それでも、フロアジャンピングは何故か解禁できてしまうんだから不思議だ。

… … …

隠された道は1階まで続いており、その奥に彼女はいた。

「……それはこっちの台詞よ、もう、さっさと街に帰ったら」
疲労を隠さず、あゆみは毒づいた。

ライシュッツに頼まれてわざわざ来てやったという事を話すと、観念した様子で街へと歩いていった。
だが唐突に森の奥を一瞥し、「見つかるわけ…ないわよね…」と呟いたかと思うと、ばつが悪そうな顔をしてその場を走り去って行く。

「何よ、思わせぶりな……気になるじゃない」
乗せられているような気がしつつも、森の奥を探索してみることにした。

そして、遂に探しモノらしきものを発見。
「光る物を探すのは慣れてるんだから! って、後ろ、敵!?」

料理なしの毒で削りきれる程度で本当に良かった。
通常攻撃が来てたら痛手を負っていたはずなんだけど、幸い封じ技やら属性やらが飛んでくるだけだったので、特に苦戦はしなかった。
もしかしたら、全封じ技で脚を封じられていたら、行動速度が低下して回復が追いつかず負けていたかも。

「良かった、探しモノ……この髪飾りは無事みたい」
とりあえず酒場に戻って報告をと思った所で、唐突にブック・オブ・シャドウズが脈動する。
「え?何?」

次の瞬間、あゆみは街に戻ってきていた。
「どういうこと?」
「強烈な殺気を感じた」
「……本にも生存本能ってあるのかしら」

酒場を覗いてみると、そこには予想通りライシュッツとアーテリンデがいた。
「今回はありがとう、わざわざ私を……って、貴方が手に持っているそれ!」
「きゃあっ!?」
先程1階奥で拾った髪飾りを奪われてしまった。

「姉さん……って、あの魔物になった?」
「もしかして、探してくれたの?」
「さ、探し物は得意だから」
別に渡すつもりはなかったのだが、とは言わないでおいた。
「そっかあ……見つかったか……。とにかくありがとね」

そう言って去って行く2人を見ながらあゆみは思った。
「あの2人の犯行って、まだバレてないんだ……」
次はいよいよ、いしにえの飾りを手に20階の探索である。

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