発売から半年ほど経って。毎日これだけやっているわけではないのでそれなりに時間はかかったものの、ようやく完全クリア(=トロコン)してきた。
プレイ時間は約250時間。大したボリュームのゲームだった……そして面白かった。
前作のルフランが面白かったので、今作も発売延期にがっかりしつつも(半ば初回限定特典目当てで)予約して購入した本作。
結論から言うと全く後悔はしていないが、自分から人に進めようとは微塵も思わないゲームだと思った。
それはなぜなのか?ていうかDV彼氏ってどういうことなのか?
以下、ゲーム性についてのネタバレを含めつつ(すばらしいシナリオのネタバレについては基本的に触れないものとする)このゲームを遊んだ感想を書いていく。
筆者は前作のルフランも裏ボスまでクリア済み(トロコンしたかは忘れた)であり、かつどちらかというと未プレイ者に向けて書いたというよりは、既プレイ者に同調してもらうために書いた記事であることを付け加えておく。
前作の流れを汲みつつ更に複雑化されたゲームシステム
前作を更にブラッシュアップした、とかではないのがポイントである。
プレイヤーがやれることだったり、ダンジョンギミックなんかがとにかく増えた。
増えたとはいっても解禁されていくのは少しずつなので、一気に色々できるようになって混乱する……ということはないが、気がつくと実に様々な要素がある。
降霊灯スキルの中には一度も使ったことのないような機能もあった。
できる事が増えていくと、迷宮のまだ行った事のない場所へ移動できるようになったりして、世界が広がる感覚を味わえるところまでは良かった。
でも、連れ去り&隠れ家(シンプルに何一つ面白くない)、魔女嘆願を最大までしても100%抑制できない強制移動床(ただひたすら面倒くさい)、重い扉(開けるのに1ターン必要になるが特に意味が感じられない)、そこらじゅうにあるダメージ床&ダメージとついでに敵に気付かれなくなる降霊灯スキル(あまりにも便利過ぎて常時これを使うのが前提みたいになっていた)、気軽に腐臭をまいてくるエネミー(腐臭は人形兵の友好度が下がり、結果として戦闘における戦略のひとつである共振に致命的な影響を与える)……あたりは本当に通しで遊んだ事があるのかと疑ってしまう要素である。
一応、増えてよかった要素もあげておく。
追加ファセット達(前作より更に種類が充実。ビジュアルが楽しめるし性能的にも楽しめる)、旅団セーブ&ロード機能(ただ、使えるタイミングが遅い。もっと早く解禁してくれればよかった)、二つ名つきのエネミーに対するエフェクトの追加(前作では知らないうちに二つ名つきエネミーにボコボコにされる事があったが、戦闘開始時にはっきり分かるようになった)、経験値が貰えるお肉のドロップ(新しい人形兵が作れるようになった時にすぐ実戦に出せるのが良い。もっとも、装備が充実してくるとレベルが低くても気にならないが……)、ドナム奇書(いわゆる技マシン。結魂書によってやれることが決まっていたのをカスタマイズ出来るようになるのは嬉しい)など。
イベントが簡略化されたダンジョン
前作の時は迷宮の見た目がまったく変わったり、迷宮内でちょっとしたイベントがあったりして(あくまでメインストーリーは独立して存在する)楽しめたりした。
が、今作はダンジョンRPGにそのようなものは不要と言わんばかりにひたすら迷宮を突き進んでいっては壁にぶちあたり、その壁を何とかしてもらうために魔女報告(メインストーリーを進めるトリガー)をしに拠点へ戻る……というのを繰り返すスタイルに変化している。
進んでいくと迷宮の様相が変わるには変わるが、前作の時ほど劇的な変化はみられない為、少し物足りなさを感じてしまう。
今作の迷宮内イベントは「またこのパターンか……」と思うものばかり。いわゆる階層ボス的な存在も、マップ上のびっくりマークがある場所に移動したら紫の鳥が出てきて強い敵を召喚して戦闘が始まる……という流れで固定である。
これは何か……何も考えつかなかったのだろうか?
毎回出てくるシステムメッセージも全く同じで一切変わり映えしない。
もっとも、発売当初はダンジョンRPGに植えていたのでただひたすらストイックに探索を進めていくだけでもダンジョンRPGからしか摂れない栄養素がたくさん摂取できてそれはそれで楽しかったというのも付け加えておく。
レトロゲームのようなランダムダンジョン
今の時代にレトロゲームのようなという言葉を使うと、懐かしさを感じさせる褒め言葉だと捉えられがちだが、これについては特に褒めていない。
ゲームをとある場所まで進めていくと、ローグライクのように毎回マップが自動生成されるダンジョンに挑む事になるのだが(ストーリー進行に必須である)、これがまあ面白いかと言われると特にそんな事はないのである。
そもそも個人的にローグライクゲームにそこまで楽しみを見出さないタイプなので、3DダンジョンRPGをやっていたら突然違うゲーム性のものをお出しされて何とも言えない気持ちになっていた。
3DダンジョンRPGの「地道な探索」をしたいからこのゲームをやっているのであって、潜るたびに毎回何が起こるか分からない「新鮮な冒険」を求めていない。
正直言って水増し感が否めないし、これのせいで依頼メモ(特定の階に落ちているレアアイテムを拾って納品する要素)のアイテム集めの面倒さが前作と比べて跳ね上がっている。
ランダムダンジョンを探索していく所は、十数階分の自動生成マップ→固定階層(従来通りのマップ)→十数階分の自動生成マップ→……の繰り返しになるのだけど、自動生成の階層からしか手に入らないレアアイテムの情報がゲーム中のUIから参照できないのである。固定階層から手に入るレアアイテムの情報は分かるのに、だ。
どうしてそんな絶妙に不親切な事をしてくるのだろう?
更に言うと自動生成アルゴリズムにも問題がある。
起きる確率は低め(普通に遊んでて2回くらい起きた)だが、どうも落とし穴を生成する処理に問題があるらしく、どうあがいても正しい順路で次の階にたどり着けない詰みのマップが生成されることがあった。
こうなったら見えている落とし穴に自分で落ちるしかないが、このゲームは落とし穴に落ちるとHPが凄まじく減り、続けて数階分落ちれば全滅する仕様である。
真下が床であることが判明している固定階層ならまだしも、自動生成マップで落とし穴に落ちるということは最悪の場合全滅する可能性がある事を意味する。
なぜ……なぜ今の時代に到達経路の確認もしていない自動生成マップを……。
後に分かることだが、この自動生成ダンジョンシステムは地獄の先行体験版に過ぎなかった。
雑にして心地よい戦闘バランス
前作にも言えることだが、今作もまた戦闘バランスははっきり言って雑である。
盾役に攻撃を受けてもらいつつ、うまく状態異常を決めて知的に勝利……みたいな事ができるのは最序盤だけ。
カヴンに複数のアタッカーを詰められるようになるあたりからバランスは徐々に崩壊を始めていき、ボスエネミーが全体攻撃をぶっ放してくるようになるあたりからバランスなどというものは存在しなくなる。
全体攻撃が来たら基本的に起き上がりこぼしになるし、大量の複数回攻撃に対して回避したり耐えたりするのを祈りつつ蘇生アイテムが尽きる前に倒せ!みたいなことになる。
属性限定カウンターのドナムがたくさん用意されているが、うまく使えた事一度もない。どうせ複数回行動されるし。
興味深い事に、このたいへん雑な戦闘バランスがほどほどに面白かったりするので、世の中わからない。
敵が雑に強ければ味方も雑に強くなれる。装備を錬金合成でどんどん強くしていろんな効果を付けたりして違法みたいな威力のグループ攻撃で一掃する楽しさといったら。
物理攻撃に耐性を持つ敵が出てくるようになったら、ドナム(魔法みたいなもの)に特化した人形兵のカヴンを組んで全体・グループドナムをぶっ放してものすごいダメージを出して倒すなど。
きちんと準備してやれば、人はすごいダメージが出ると楽しい、という原初の悦びを得ることができるのだ。
戦闘が雑なのでコマンド入力も非常に楽(相手にもよるが、バランス崩壊してからの戦闘は基本的に自動戦闘でよい)であり、雑魚戦は1ターンで終わるのが当たり前、2ターン目が回ってきたらふーん結構もつじゃん、といった気持ちになる。
育成状況・装備にもよるがボス戦すら2ターンだか3ターンで終わることもあった。
前作も大概だったが、今作は雑さが更に顕著になったように思える。これはこれで愉快なので悪くはない。
だが……それも表シナリオクリア直前まで。
表シナリオボスは今までの雑な戦闘から一転、急に強くなり知的な要素を求められるようになり、「ちょっと待て、お前の売りはバカの戦闘バランスだったのでは!?」と突っ込みたくなるほど。
どうも今回の戦闘調整は0か100らしい。
表シナリオボスが、「弱体化できるとある要素を見つけて使用しないと到底かなわない調整」なのはどうなんだ。
そんな某ゲーム裏ボスの薬液パズルじゃないんだから。
絶対勝とうね!みたいな展開の中でパズルボスを出して心を折ってくるのはやめてくれ。
シナリオを人質に取れば何をやってもいいわけではない
このゲームの良いところとして真っ先に挙げたくなるのはシナリオだが、シナリオについてのネタバレをこの記事で触れるつもりはない。
なので、とにかくシナリオが素晴らしいというのを前提条件としておく。
苦労して表ボスを倒せば、当然シナリオが熱い展開を迎えることは言うまでもない。
ここで二つの問題が発生する。
・表ボスを倒したところでシナリオが全然きりがよくならない
・きりがよくならないので続きが気になるところだが、話の続きを見るためにすさまじい苦行を強いられる
ここで言うすさまじい苦行というのは……表シナリオクリア後に解禁される、いわゆる裏ダンのことである。
この裏ダンの仕様があまりにもひどいのだ。
ゲームを遊んだ事がない人でも分かるようになるべく抽象的に説明すると、だいたい以下の通りである。
・全3651階の自動生成マップ
・従来通りの方法でダンジョンを脱出すると、探索状況リセット
・低確率(1%くらい?)で発生する出口を使って脱出すると探索状況が保持されつつ脱出できる
・低確率(1%くらい?)で発生するエレベーターを使って先に進むと、100~200階分くらいスキップできる
・ただしエレベーターで一気に沢山進むと、キャラクターが瘴気の濃さにあてられて割合での弱体化が掛かる(全パラメータ及びHP回復量が最大95%減少する)
・ダンジョン内を徘徊し続けることで瘴気に適応し段階的に弱体化が解除されていく
・数百階分くらい先に進む毎に少しずつ表シナリオでの謎が明らかになる話が展開される(裏ダンでのストーリーが進んでいく)
・裏ダンでのストーリーが進むたびに、その話が展開された階数までワープできるエレベーターが解禁されるが、そのエレベーターを使うと前述の瘴気によるキャラクター弱体化が掛かる
・効率的に先に進もうとすると否応なしに掛かる弱体化を解除するためにダンジョン内を徘徊し続ける必要があるが、一定確率でダンジョン内のランダム範囲を破壊するギミックが存在する(破壊に巻き込まれると人形兵が連れ去られ実質的に探索を続けられなくなる)
・上のギミックによってダンジョン内の地形が破壊されると、次の階段へたどり着けなくなる(=通常の手段で進行が不能になる=地形が破壊された事によって生まれた落とし穴に自ら落ちる必要がある)
・表シナリオの自動生成マップの時点でもそうだったが、進行に壁破壊が必須であり、壁破壊に必要なリソース管理(リインフォースというパラメータが存在する)をしっかり行っていかないと最悪の場合進行不能になる
・扉を開けた瞬間に強敵(即死級の列攻撃を1ターンに複数回撃ってくる)に衝突する可能性が常に存在する
・あまりにも味気ないテキストのランダムイベントが発生することがあり、ものによってはデストラップ級の強敵と戦わされる(何度か戦うはめになったが、勝ったことが無い)(選択肢次第で回避可能だが初見では当然分からない)
・ダンジョンを進んで行くごとに拾える装備品の性能が凄まじい勢いでインフレしていき、今まで錬金合成で強くしていった装備が容赦なく過去のものになる(ここにあった装備強化の楽しさとは!?
表ストーリーに組み込まれた自動生成ダンジョンシステムは、恐らくこの裏ダンをやりたかったがために導入されたものなんだろうな、というのは裏ダンのストーリーにおける位置づけからして推測できる。
確かに話の設定上、全3651階の自動生成マップがあることはエモいし意味がある、それは分かる、だがそれを原液のままお出ししなくても良かったのではないか?
従来通りの固定マップがいくつかあって、1階分クリアするたびに設定上は数百回進んでますよ~っていうのじゃいけなかったのか?
これだけ面倒な仕様のランダムダンジョンをストーリーの為にやらせるのはもはや狂気だ。
この裏ダンがやってもやらなくてもいい位置づけならともかく、やらないと到底納得いかない話の運び方をしておいて、先に進もうとするプレイヤーに対してあらゆるギミックでこれでもかというくらいストレスをかけるのはあまりにも酷い。どうして誰もこの蛮行を止めなかったんだ。
好きなところいっぱいあるのに手酷い仕打ちを受け続けて、それでも離れる事ができないでいる自分を俯瞰して見た時にDV彼女に遊ばれている女だと思ったので、ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団はDV彼氏。
結局何が言いたいかというと、とてもじゃないけど人に勧めようと思わないけどそれはそれとしてあの人の事を悪く言わないであげてほしい
ここまで散々、彼(=ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団)のよくない所言ってきたけど、いいところだってある。
最初にも既に書いた通りとにかくストーリーが秀逸。公式サイトで使われているうたい文句である「愛と勇気の冒険譚」は伊達じゃ無い。ただしその過程はCERO:Dで犯罪・暴力だけど。それでも最後まで遊んだ人には分かる、これは紛れもない愛と勇気の冒険譚であると。もしこのゲームを始めた人がいたら、是非彼が愛と勇気の冒険譚を語りきるところまで付き合ってあげてほしい。……無理にとは言わないが。
それからグラフィック。人形兵の立ち絵はもちろん、背景も、ダンジョンも、どこもかしこも綺麗。今時のゲームにしては珍しくムービーシーンが存在しないが、そんな事は気にならない。主要キャラクター達は表情、ポーズ差分も大量にあり、生き生きと動いて物語を彩る。喋っていないキャラクターでも話の流れでころころと表情を変えている所なんかは見所の一つといえる。
音楽も素晴らしかった。 前作の頃からこの世界観といえばこういう曲!というのが固まっていて、今作でも引き続きそういうものをお出ししてくれて良かったなあと思う。シリーズもののゲーム音楽で難しいのはそのシリーズのものと分かる感じの音楽を作る事だって某ゲームのコンポーザーも言ってた。特に気に入っているのは、みんな大好きアパルトマンのBGM(あまりにも使い勝手が良いのか、途中からイベントシーン中でも流れ始める)こと”Club Coven”、それからいくつかのボス戦で流れる”Dance of Evermore”。
以上の素晴らしい要素に加えて、膨大な量ある極めて退屈なアイテム拾いクエストだとか、よく使うアイテムがアイテム欄の妙なところにあって毎回スクロールするのが面倒だとか、戦闘中に使うアイテムを選ぼうとすると何故か換金アイテムがずらりと並ぶだとか、中途半端に説明が足りないスキルや装備の説明欄だとか、スキルの効果などの説明欄が頑なに1行で表現されていて2行目と切り替えるあのUIやバフ・デバフ・状態異常の表示UIが不親切な所が前作から改善されていない事だとか、そういった事まで加わった結果きれいな令和のレトロゲームと化したガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団のこと、なんだかんだで大好きだから悪く言わないでほしい。
でもCERO:Dにかまけているのかどうか知らないが、小学校高学年レベルの下品な表現が散見される(古来からダンジョンRPGといえばお色気要素がつきものだと誰かも言っていたが、はっきり言ってお色気以下である)ので人に勧めると品性が疑われるおそれがあり、全然人に勧めようとは思わない。実のところ人に勧めたくない理由の比重としては、ゲーム性と同じくらいこっちの方が大きかったりする。
人に勧めようとは思わなくても好きな作品、あるでしょ。ただ今作がそれだったという、それだけの話である。
うーん。次回作も楽しみ。
匿名 曰く、
VITA版しかやってないけど開発費というか時間というか裏ダン作り込めなかったんだろうなて感じたけどストーリーが最高だったからそこまで苦じゃ無かった。ただ古いWIZ系の不便さや理不尽さに慣れてない人にはやっぱ苦痛か。。。